・レオス教とは
この辺の設定はこれから煮詰めていくのですが、一つ確定しているのは、「魔法のある異世界の存在が公式に信じられている」点です。以下はとりあえずの仮設定なので、それを踏まえたうえで読んでいただけると幸いです。
正式名エクスレオス教、通称レオス教は現在主人公たちのいる宗教国家アストラの国教でもあります。
この宗教における「異世界」とは、「空の向こうの世界」、「上位の世界」といった言葉で表現され、そこでは神々や上位の人間たちが住んでいると信じられています。本作のキーワードでもある魔法道具は、その世界から零れ落ちた、あるいは意図的に授けられた物であると見なされています。「下界の民である我々に、神は魔法の道具を授けてくださったのだー!」的な感じです。
そのため、魔法道具を回収する冒険者ギルドは、レオス教率いる聖騎士団の管理下に置かれています。作中で聖騎士がダンジョンの門番やってたり、ギルドにジャッジ部隊員であるヘンリーが入ってきたりしていたのは割と普通のことだったりします。
・魔法道具はダンジョンから回収されたあと、どうなるか?
具体的には以下のような経路をたどることになります。
1、ダンジョンで発掘されたor冒険者登録の際に預けられた後に、聖騎士団の本部まで送られる
2、そこで魔法道具・情報の調査が行われ、危険度が高いものは聖騎士団が保管する。その際、元の持ち主には魔法道具の代わりにいくらかの金銭がボーナスとして支給される。そんなに危険ではない魔法道具や情報は、元の持ち主に返されるか、換金されて市場に出回る。
以下、簡単な解説になります。
魔法道具のほとんどは微妙な性能だったり、何の役に立つのかも分からないようなシロモノだったりするのですが、ごく稀にとんでもなく強力な魔法道具が発見される場合があります。
そうした魔法道具が個人の手に渡り、そいつ一人が無双して国家の転覆とか図られたらヤバい、ということで、わざわざ魔法道具を検査する手順が組み込まれています。この検査が終わった魔法道具を「登録済み」と呼んでいる場合もあるようです。
また「登録されていない魔法道具を売買してはならない」、という規則が設けられているのもこれを防ぐためです。もし違反してしまうとかなり重い罰が下されるので、ほとんどの民は制度の目的を理解していなくてもこのルールに従っています。
後は余談になるのですが、魔法道具以外にも古文書が解読・検査されており、そこで得られた情報は、危険だと判断されたら秘蔵。特に問題なしと判断されたら主に職人たちや各都市の長、その他行政を行うグループなどに公開されています。
特に職人たちに関しては、当初、魔法道具の出現によって職を追われるのではないかと危惧していたのですが、古文書から各物品の効率的な製造方法・技術などが解読されてむしろ以前よりも仕事が増えているようです。
・識字率等、文明の発展について
今のところ、この国の文明を発展させているのは魔法道具ではなく、主に古文書に記された情報となっています。
様々な能力を発揮する魔法道具ですが、『同じ魔法道具は二つとして存在しない』がために一部地域にしかその恩恵が行き渡らず、しかも能力の複製もできないので、結果的に国全体の発展にはほとんど役立っていません。
しかし古文書から解読された情報は有益なものが多く、さらに共有もできるので、レオス教団は幅広く公開して国の発展に役立てています。
その情報の具体的な中身には、より強力な武器や建築物の設計図、効率的な資源の調達方法、法の概念などが挙げられます。
作中ではスロウが文字を読めない描写がありましたが、ちょうどそのころ教育制度の整備が始まってきた段階で、都市部を中心に識字率が上がり始めていた、という裏設定があります。
しかしながら、水の太陽や魔物による妨害のほか、そもそも制度自体に欠陥があったりするので、文明の発展スピードはかなり緩やかなものとなっているようです。
・法体制について
作中では法の存在が描写されていましたが、実はこれは完璧なものではなく、かなり穴のある制度となっています。
というのも、この国における「法律」という概念もダンジョンから持ち帰ってきた情報の一つだからです。
冒険者たちが回収してきた古文書をレオス教団が必死に解読して、「どうやら法律というものがあるらしいのだが、これはすごいぞ!」 と感動して、アストラ国に適用させています。
しかし、もともとダンジョンから発掘されたものだったので断片的な知識しか得られず、それらを繋ぎ合わせてどうにか理解している、というのが現状です。
中途半端なままそれを利用しているのは、ひとえに「上位の世界に我々も近づきたい」という信仰心のためだったりもします。
また、法律に限らず、現在のアストラ国の制度のほとんどは中途半端でけっこう穴だらけです。これは水の太陽や魔法道具の出現によって多くのものが変わり始める時代に突入しているからです。
・冒険者がパーティーを組む理由
この世界の冒険者は数名でパーティーを組んでダンジョンを探索しますが、これには大きく分けて二つの理由があります。
一つが、「より多くの魔法道具、及び情報を回収すること」。
これは単純な話で、自分ひとりでやるよりも、複数人の方がより多く魔法道具を運べるメリットがあるからです。
さらに言えば、誰か一人を荷物持ちにさせて、それ以外が魔物の退治をして護送する、というやり方も可能になります。冒険者としての職務を全うするなら、パーティーを組んだ方が効率的である、という理屈です。
もう一つの理由が、「他の冒険者から襲われるのを防ぐため」です。これについて少し解説します。
まずダンジョン内でのルールとして、冒険者が命を落とした際に、後からやってきた第三者が彼らの使っていた魔法道具を拾ってそのままパクるのはアリです。
というのは、ダンジョン内に魔法道具を落としてしまえば、もうそれは未発見の魔法道具と見分けがつかないからです。
もし、これ見よがしにと魔法道具が死んだ冒険者のそばに転がっていても、それがこれから回収されようとしていたものであるという可能性はぬぐえない。ちゃんと見分けがついたらいいのかもしれないけど、魔物がうろついてるダンジョンでいちいち鑑定なんかやってられない。じゃあ、亡くなった冒険者の魔法道具はそのまま持って帰っていいよ、というふうに世論が流れていきました。
ですが、ここで問題が発生します。これだと魔法道具の強盗殺人が起きても犯人がバレない。
上記の通り法体制がいまだ不十分であるというのもあるのですが、一番の原因としてダンジョンで死亡した冒険者が魔物に殺されたのか、人に殺されたのかを判別することがほぼ不可能に近いからです。特に激戦が起こったときや強力なトラップが発動したときなどは周囲が荒らされて証拠が無くなってしまうので、冒険者が冒険者を強盗殺人しても事実上無罪となってしまいます。
そこで冒険者たちはどうするのか。パーティーを組むのです。
複数人で行動していれば仮に魔法道具を奪われても、仲間たちが『目撃者』となって事件性を証明してくれる。「お前が襲いかかってきても、仲間が見てるんだからな。逃げられないからな」と周囲にアピールすることで、同業者に襲われるのを未然に防いでいます。
ちなみに、作中でデューイがセナに警戒心を抱いていたのもこうした背景があったから。ただでさえ魔法道具に好意的な半獣人なんて珍しいのに、もっと知りたいと口にするセナがいつか欲に目をくらませて背後から刺してくるのでは、と疑ったゆえの行動が、あの対話でした。
・魔人について
魔人とは、水の太陽の雨水を飲んで重力魔法を操れるようになった反社会的存在のことです。赤い目が最も特徴的ですが、体内で魔法の力にうまく適合した魔人は赤目を抑えることが可能であるようです。そのため熟達している魔人などは普通の人と見分けがつかず、ジャッジ部隊の主な仕事はこの魔人を判別して処刑することにあります。
もともと魔人は、少なくとも人々と共生できていた存在でした。
自分たちの命を脅かす水の太陽と同じ重力魔法を操るがために、「魔物の手先なのではないか」という疑惑の目を向けられつつ、その一方で、重力魔法で魔物を殲滅することを期待されていました。
気味は悪いかもしれませんが、水の太陽から降り注ぐ雨水を飲めば誰でもすさまじい力を手に入れることができるのです。「目には目を、重力魔法には重力魔法を」と、水の太陽に対抗する動きもあったというわけです。
しかしながら、とある事件によってその希望は打ち砕かれます。
ある日、一人の魔人が、同胞である自分の一族と聖騎士たちを攻撃し、虐殺したのです。これが作中でつぶやかれていた『魔人事件』です。
この事件をきっかけに、世界中で溜め込まれていた魔人への不安が爆発し、各地で魔人狩りが行われるようになりました。
しかも最悪だったのは、なまじ一般の魔人たちも強い力を持っていたために、これに抵抗して多数の死傷者を出してしまったことです。これが決定打となって「魔人は悪魔に魂を売り飛ばした、人間の敵である」という世論が固められていきました。ちなみにこの時期に聖騎士団でジャッジ部隊が編成されています。
こうした経緯を得て、魔人は人間社会から徹底的に排除され、水の太陽の雨水を口に含むことは完全にタブーとなりました。
しかしながら、その雨水を飲むだけで誰でもすさまじい力を手に入れられる、という点に魅力を感じてしまう者がいるのもまた事実。安易に強くなろうとする一部のごろつきたちが魔人化し暴力をふるっているため、魔人は人間の敵である、という言説が既に一般常識となっています。
・デューイとヘンリーの関係について
作中では「知り合い」としか描写していませんでしたが、この二人はかなり仲が悪いです。
これは過去に、よくソロの冒険者として活動していたデューイが、ヘンリーから魔人の疑惑をかけられてあやうく殺されかけた、というエピソードがあるためです。上記の通り普通の冒険者ならパーティーを組むはずなのに、一人でいるなんて怪しくないか、とヘンリーは勘繰ったのです。
その際デューイは持ち前の危険察知能力(セナには劣りますが)や、糸の魔法道具に対して非常に有効であった断切剣で攻撃をしのぎ、生存しているのですが、これをきっかけに二人は犬猿の仲となりました。
またそれ以外の理由として、うまく世間を渡り他人との関係をつないできたヘンリーと、煩わしい人間関係を断ち切って生きてきたデューイとではそもそも根本的に相容れない、という部分も含まれています。