第百十三話 リラツヘミナ結晶洞窟
リラツヘミナ結晶洞窟。 かつて冒険者としてダンジョンに潜る日々を送っていたころ、その噂だけは耳にしたことがある。 廃都ベレウェルと並ぶ、A級・・ダンジョンの一角で、その規模の大きさもあいまって攻略の難易度はトップクラスとされており。 そし…
魔法道具で得たものは。
第百十二話 すべての元凶
「……セナ、怪我は……」「おい、静かにしろ!」 声を出した途端、何者かに頬を殴られた。 痛む首を動かして確認すると、人相の悪い男がこちらをにらんでいる。 始めて見る男だ。 自分たちを陥れたイズミルでも、あの上位ランカーの決闘者でもない。 た…
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第百十一話 セトゥムナの上位ランカー
「……だましたんですか!?」「フラントール族が隠し持つ空の『箱舟』さえあれば異世界渡りが可能になる。 実際に魔法の世界に行けるのなら、狭い部屋にこもってちまちま研究する必要なんかないじゃないか」 それに。 とイズミルが自身の背後の決闘者たち…
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第百十話 弱肉強食
多くの扉でひしめいていた大樹の内側を後ろ髪を引かれるような思いで後にし、イズミルとともに外へ出る。 室内から屋外へ出た瞬間にだけ味わえる爽やかな茎をたっぷりと堪能しながら出入口の門番に挨拶とお礼を伝え、一行いっこうはフラントールの里へと戻…
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第百九話 手がかり
「……なるほど、それでキミの生まれ故郷のことを知りたいと」 イズミルにひととおり自分の境遇を説明したあと、狭い研究室内で自分は頷いた。「はい。そこに戻るための手がかりならなんでも」「困ったなあ……僕はあくまで文化研究者であって、『異世界渡り…
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第百八話 森林学院
数時間をかけてたどりついた森林学院は、暗がりの多い場所だった。 やや薄暗い樹海に入って、やがて見えてきたのは巨大な樹木。 セトゥムナの大森林でも頭ひとつ抜けて背の高いと分かるその樹のてっぺんはまるで見通せず――。 巨人が大縄をよりあわせて…
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第百七話 雨宿り
みずみずしい森のにおいに包まれながら、豊かな緑のなかをゆっくりと進んでいく。 林の奥から流れてくる風は柔らかく、半袖という服装だと肌寒さすら感じさせるほどだ。 頭上の枝葉に遮られたわずかな陽だまりに安らぎつつ、遠くから耳に届いてくる鳥の鳴…
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第百六話 目指す場所
――スロウ視点。 今後の目的を整理しよう。 まず、当初の目的だったセナとの合流は果たせた。 砂漠の大陸から戻ってきてからずっとそれを目指してきてようやく達成できたわけだが、あと一人、再会しなければならない仲間がいる。 湾曲した大剣を扱う剣…
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第百五話 顔合わせ
――セナ視点―― ……ゆっくりとまぶたを持ち上げて、わたしはぼんやりと天井をながめた。 なんだか重く感じる腕を額に当てて、もういちど心地よい暗闇の余韻にひたろうとする。 ……あれ…… そういえばわたし、スロウさんと再会できたはずじゃ――。 …
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第百四話 懐かしい顔
――スロウ視点―― とりあえず、話はあとだ。 まずは、この序列の七位を倒す! いまだ状況がよく分かっていない様子の相手に、問答無用で飛び込んで攻撃を加える。 割り込みに文句を言わせる時間は与えたくない。 風をまとって、下から音叉剣を振り上…
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第百三話 待ち望んだ再会
――セナ視点――「……もう、そんなに謝らないでください! 私の方が軽傷なんですから。 辛いときはみんなで支え合わないと」「すまない……セナ……。 くそっ、やつら闇討ちまでしてくるなんて……!」 松葉杖を携えたおじさんが、椅子に座ったまま悔…
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第百ニ話 フラントールの里へ
苦労人の熊人や猫人族の族長、そしてドランドランの面々から見送られ、朝露で湿ったセトゥムナの大森林を進んでいく。 メンバーは俺、エフィール、ブレアさんの三人。 フラントールの里へは、歩いておよそ二、三日ほどかかるそうだ。 直線距離にすればそ…
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