魔法道具で得たものは。

第五話 十八時間前

「ここがリリーの家で、こっちがコルの家! それでねー」「はあ……はあ……ちょっと……待って……」 子どもたちによるミスフェルの案内が始まってから、数時間が経った。 この小さい体でなぜこんなに動けるのだろうか? 子どもの体力って恐ろしい。 ス…

 第二章 襲来編
第四話 二十四時間前

 ここはごくごく普通で平和なミスフェルの村。 この村で生まれ育って九年のリリーは、退屈していた。 日が昇り始めた午前中、こうして村の中を散歩しているが、既に知っている道、知っている家ばかり。 もっと新しいものと関わりたいと思うことは、子ども…

閑話 海を纏い、空を漂う

「寝ているやつらを起こして酒場まで連れてこい! 立てこもるぞ!」 村長からの指示で数名が外に飛び出す。 しかし。「うわっ!!」 ランタンを掲げて走っていた者たちに、黒い影が飛びかかった。 村長たちの目にわずかに見えたのは、トカゲのような細い…

閑話 不穏な雨音

「まったく、ひどい有様だ」 スロウとデューイが出て行ってからすぐ後のこと、 スクルナ村の人々は、少しでも気分を良くしようと酒場で酒を飲んでいた。 乱闘があったために酒場の中は混沌としており、こぼれた酒や汚れたテーブルがところどころに散らかっ…

第三話 旅立ち

 やがて剣の波動は弱まっていく。 スロウは、オオォォォォンとわずかに震える剣を握りしめて立ち尽くしていた。「は、はは……」 スロウの目の前で、気を失って倒れている男たち。 果たして、数時間前の自分は想像できたのだろうか。 自分が・・・、この…

第二話 代弁するもの

 村の中でもひときわ大きい建物からは、酒の匂いがする。 きっと村人いきつけの酒場なのだろう。つくりは他の建物よりも頑丈で押してもびくともしない。 これほどの耐久力なら魔物が押し寄せたときの砦にもできるだろう。 秋の夜は肌寒いからか、木窓はす…