魔法道具で得たものは。

第七十四話 神とされたものたち

「エレノア・ルクレールって、どういう存在なんだ?」 その問いに、メレクウルクは神妙な面持ちになった。 メレクウルクは日陰に入るか入らないかの、微妙な境界線に立ったまま腕を組む。 よく見ると頭の裏のあたりが思いっきり日に当たっているが、腕輪の…

第七十三話 熱砂での問答

「――この砂漠は、ひとつの巨大な大陸として地の果てまで続いている」 メレクウルクは、眼前に広がる砂漠を眺めながら言った。 左腕にはめられた腕輪の魔法道具のおかげか、この男は汗もかかずに砂丘の上に立っている。 スロウは相も変わらず強烈な日差し…

第七十二話 罪人の呪い

「さっきも言ってたよな、メレクウルク。 確か、あなたは『追放者』だって。 それについて教えてほしい」「……いいだろう。 追放者とは、イストリアで大きな罪を犯し、別の異世界へと追い出された罪人たちの名称だ」 メレクウルクは一転して険しい表情で…

第七十一話 追放者メレクウルク

「しかし、意外だったぞ。まさかこんなところで同郷の者と出会えるとはな。 貴様もダンジョンから抜け出してきたのか?」「いや、はは……」 意味が分からず、上機嫌な様子で話しかけてくる男に曖昧な返事をよこした。 狩りが終わり、豚人族が縛りあげた砂…

第七十話 転機

 そいつを目撃したのは、今日も狩りに参加しようと井戸の前に集まったときだった。 常連の豚人族が集まる中、一人だけ突出して背の高い男がいたのである。 豚人族の者ではない。転移してから最初に出会ったあの魚骨の仮面族とも違う。 間違いなくスロウ達…

第六十九話 新生活

 砂魚の狩りは、最初の数日こそ苦労したもののパターンを覚えた後は楽になった。 こいつらは背後から獲物を襲う習性があることに気づき、それを利用してわざと隙を見せる。 もちろん、他の豚人族の武器が届く範囲でだ。それによって倒された砂魚はスロウの…

第六十八話 生存戦略

 地面から伝わってくる熱に手をかざしながら、スロウはほっと一息ついた。 外はすでに夜が訪れており、地下空洞の天井に空いたいくつもの穿孔から冷たい月光が差し込んでいる。 豚人族によって音叉剣が回収された今、夜の寒さをどう乗り越えようかと不安に…

第六十七話 豚人族の集落

 着いたのは、巨大な地下空洞の内部だった。 赤茶色の岩壁に囲まれた洞窟を抜けたあとに広がるのは黄色い遮光の差す地下空間で、天井を支える大きな岩の柱が乱立している様子はまるで巨木の大森林のようだった。外の砂漠とは違って暗がりが多く、目に優しい…

第六十六話 謎の種族

 謎の砂嵐をしのいだ後は、重力魔法での偵察回数が増えた。 もうすでに予断を許さない状態に陥っている。確認できたわけではないが、拠点としていたオアシスは無くなっている可能性が高い。背水の陣とはこういう事態を指すのだろうか。 わずかな手がかりも…

第六十五話 不気味な砂嵐

 ――北の方角を歩き続けて数時間が経ったころ、天候が怪しくなってきた。 妙に風が強くなってきて、開けていたはずの視界が濁ってくる。 あの抜けるような青空はいつの間にか見えなくなり、吹き荒れる砂塵に危険を感じ始めた。 これは、今までにない現象…

第六十四話 一番のごちそう

 六日目。 北の方角を調べることにする。 オアシスのおかげで喉の渇きは癒せるが、飢えをごまかすのはさすがに限界になってきた。 まだ暗いうちから二人して目が覚めてしまい、すぐに出発することになった。 広大な砂漠をちまちま歩いていると気が狂いそ…

第六十三話 収穫ほぼ無し

 山脈だと思っていたものは、山脈じゃなかった。ほぼ垂直に近い崖が城壁のごとくそびえ立つ赤い台地だった。途中からやや傾斜のある地面が続いたかと思うといきなり垂直になったような地形である。 スロウたちは「ようやく着いたか」と言わんばかりにため息…