第百十話 弱肉強食
多くの扉でひしめいていた大樹の内側を後ろ髪を引かれるような思いで後にし、イズミルとともに外へ出る。 室内から屋外へ出た瞬間にだけ味わえる爽やかな茎をたっぷりと堪能しながら出入口の門番に挨拶とお礼を伝え、一行いっこうはフラントールの里へと戻…
魔法道具で得たものは。
第百九話 手がかり
「……なるほど、それでキミの生まれ故郷のことを知りたいと」 イズミルにひととおり自分の境遇を説明したあと、狭い研究室内で自分は頷いた。「はい。そこに戻るための手がかりならなんでも」「困ったなあ……僕はあくまで文化研究者であって、『異世界渡り…
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第百八話 森林学院
数時間をかけてたどりついた森林学院は、暗がりの多い場所だった。 やや薄暗い樹海に入って、やがて見えてきたのは巨大な樹木。 セトゥムナの大森林でも頭ひとつ抜けて背の高いと分かるその樹のてっぺんはまるで見通せず――。 巨人が大縄をよりあわせて…
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第百七話 雨宿り
みずみずしい森のにおいに包まれながら、豊かな緑のなかをゆっくりと進んでいく。 林の奥から流れてくる風は柔らかく、半袖という服装だと肌寒さすら感じさせるほどだ。 頭上の枝葉に遮られたわずかな陽だまりに安らぎつつ、遠くから耳に届いてくる鳥の鳴…
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第百六話 目指す場所
――スロウ視点。 今後の目的を整理しよう。 まず、当初の目的だったセナとの合流は果たせた。 砂漠の大陸から戻ってきてからずっとそれを目指してきてようやく達成できたわけだが、あと一人、再会しなければならない仲間がいる。 湾曲した大剣を扱う剣…
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第百五話 顔合わせ
――セナ視点―― ……ゆっくりとまぶたを持ち上げて、わたしはぼんやりと天井をながめた。 なんだか重く感じる腕を額に当てて、もういちど心地よい暗闇の余韻にひたろうとする。 ……あれ…… そういえばわたし、スロウさんと再会できたはずじゃ――。 …
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第百四話 懐かしい顔
――スロウ視点―― とりあえず、話はあとだ。 まずは、この序列の七位を倒す! いまだ状況がよく分かっていない様子の相手に、問答無用で飛び込んで攻撃を加える。 割り込みに文句を言わせる時間は与えたくない。 風をまとって、下から音叉剣を振り上…
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第百三話 待ち望んだ再会
――セナ視点――「……もう、そんなに謝らないでください! 私の方が軽傷なんですから。 辛いときはみんなで支え合わないと」「すまない……セナ……。 くそっ、やつら闇討ちまでしてくるなんて……!」 松葉杖を携えたおじさんが、椅子に座ったまま悔…
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第百ニ話 フラントールの里へ
苦労人の熊人や猫人族の族長、そしてドランドランの面々から見送られ、朝露で湿ったセトゥムナの大森林を進んでいく。 メンバーは俺、エフィール、ブレアさんの三人。 フラントールの里へは、歩いておよそ二、三日ほどかかるそうだ。 直線距離にすればそ…
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第百一話 出発前夜
その後は、けっこう事務的な話をすることになった。 フラントールの一族の代理決闘者となることを決めた以上はちゃんと話をしておかなければなるまい。 猫人族から兎人族への鞍替えという形になるので罪悪感があったが、その旨を正直に伝えると意外にもあ…
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第百話 あの少女の動向
熊人族の里は、徒歩で数時間のところにあった。 既に時間は正午過ぎ。 早朝の決闘から日は昇って、鳥や虫の鳴き声が響き始めた豊かな大森林を進んでゆき……。 そうして見えてきたのは、規模の大きな集落だった。 広い畑、入り口のでかい家、巨大な食糧…
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第九十九話 光明見える
決闘に勝利し、諸々の要求をしに猫人族の族長とともに歩いていく。 向こうの代表らしき相手は、三十代かそこらの壮年の男だった。 ドランドランは「細い男」というふうに表現していたが、俺からすればこの人も十分でかい。 熊人族に特有なのであろう丸い…
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