魔法道具で得たものは。

第百三十三話 奔走

 下方からの強風に目を閉じそうになった。 高所からの落下にももう慣れたもので、セナと二人で風を操って無事に着地。 確かな地面の感触に妙な安心感を覚えながら顔を上げると、つい今しがた自分たちを運んできたばかりの『空飛ぶ舟』が謎の駆動音とともに…

第百三十二話 導き手 後編

「――今のうちに、舟を!!」 場をつんざくようなエフィールの声にハッとして、顔を上げた。「そうだ! あの二人がカギを手に入れてくれたら あとはもう舟を動かすだけで逃げられる!! エフィール! 里の人たちは!?」「距離があったから無事なはず!…

第百三十一話 導き手 前編

「……追放者、とか言ったっけ? 古文書で読んだことがあるな。 たしかイストリアでの重罪人に与えられた呼称だ。 なるほど……お前も異世界人か」 冷や汗を隠すように、平静を装って呟いたスノスカリフ。 その言葉に反応してくるりと相手方に向きなおっ…

第百三十話 因縁と運命

「……スロウ君、フラントールくん、どうか嘘だと言ってください。 今ならまだ間にあう! その女に脅されているのなら、我々がどうにかします!」 だから――!」「ヘンリーさん。 俺は自分の選択でここにいます。 そっちの側につくつもりはありません」…

第百二十九話 それぞれが探すもの

「……スロウ……」  頭上から女の子の声がした。 横たわった状態のまま、優しく頭を撫でられる感触に身を委ねる。 ……エフィールだろうか……? いや、それにしては手が小さすぎるな……。 意識が覚醒しきらないまま、うっすらとまぶたを開…

第百二十八話 寄りかかる

 ――久々に訪れたフラントールの里は、ひどい有様になっていた。 兎人族が住んでいたのであろう数々の木組みの家屋が、投石器にでも狙われたのか大岩につぶされて崩れており、一部には焼けた跡があるものも見て取れた。 広場になっていたスペースは無数に…

第百二十七話 集い始める

 エフィールの姿には目立った外傷や汚れなどは見えなかった。 フラントールの郷を守ってくれていたらしいのは聞いている。 今までに天樹会からの数々の妨害や攻撃があったはずだが……おそらくは本人の卓越した戦闘技術でしのいできたのだろう、服装には多…

第百二十六話 三つ巴の戦い 後編

「ははははは!! 実に良い気分だ、踊れ踊れ!!」 安全地帯から高みの見物を決める天樹会員の不愉快な笑い声を無視し、ひたすら剣を振り続けた。 おそらく唯一の対抗策である、水霊みずれいは呼び出すことはできなかった。 近くに大量の水源は存在せず、…

第百二十五話 三つ巴の戦い 前編

「あははは!! すごい、そんな避け方もあるんですね!」 セナからの攻撃をわずかな体さばきだけで避けた相手決闘者が、冷や汗をかきながら反撃を繰り出す。 しかしセナがそれを、つい今しがた見たばかりの体さばきを真似して回避。 カウンターの一撃で相…

第百二十四話 意外な伸びしろ

 天樹会傘下の決闘者たちは、戦いを宣言するや否やすぐに襲い掛かってきた。 転んだ勢いで団子みたいに絡まっていた自分たちだったが、デューイが強引に蹴っ飛ばしてくれたおかげで距離を取ることに成功。 すぐに体勢を立て直して敵と向かい合う。「……動…

第百二十三話 もっと早く

「この風、すごいですねスロウさん!! こんなに早く走れるようになるなんて!!」「ちょ……ほんと、待って……」  リラツヘミナ結晶洞窟を脱して間もないころ……。 鬱蒼と生い茂る大森林のど真ん中を、俺たちは息も絶え絶えに走り抜けていた…

第百二十ニ話 地上へ!

「――返せ!! その短剣はお前のものじゃない!!」 音叉剣の能力を発動しながら、敵の一人…… 風の短剣を持っている男に向かって突進。 毒煙の中を突っ切って攻撃してきた自分の存在に、敵は驚愕したようだった。 かざされる『音叉剣』と『風の短剣』…