魔法道具で得たものは。

第四十一話 今後のプラン

「もう旅に出るのですか?」 外へ続く道の上で、村長はそう言った。「ええ、緊急の仕事ができたもので」 ジャッジの隊長は礼儀正しく頭を垂れる。 あの後――エーデルハイドの魔人と戦ったあと――スロウたちは思い出したように弦楽器の魔法道具を回収し、…

第四十話 緊急指令

「それで? まだやるつもり?」ひざまずいて息を切らすスロウたちとは対照的に、エーデルハイドの魔人はまるで消耗の色が見えない。……浅はかだった。ジャッジが戦っている間に逃げるべきだった。数分前に犯した致命的なミスに歯を食いしばる。この後はどう…

第三十九話 望まぬ戦い

「大丈夫です、まだ気付かれてないみたいです」 突然現れた本物のエーデルハイドの魔人を前に、影から様子をうかがう。 あの偽の魔人が作り出してくれた土の杭のおかげで身を隠すことはできている。 今なら逃げることも、なんなら奇襲することもできるかも…

第三十八話 エーデルハイドの魔人

 魔人、とおぼしき相手はあっさりと見つかった。 さすがエリート部隊と言うべきか、ジャッジ一行はスロウたち冒険者が見つけられなかった痕跡を次々と発見し、順調すぎるくらいに探索が進んだ。 そいつを見つけたのは、深い森の中のさらに奥地まで足を踏み…

第三十七話 魔人事件

「久方ぶりですね。そちらのお嬢さん……フラントール君も」「はい! お元気でしたか?」 高身長の彼は胸に手を当てて、礼儀正しく挨拶をしてくれた。 中都市カーラルで別れて以来だ。奴隷商人を捕まえるのに一役買ったのはずいぶん昔のことみたいに思える…

第三十六話 思わぬ再会

「こんな小さな村までご苦労さまでした。どうぞお休みになられてください。 宿まで私が案内しましょう」 着いたのは、何てことのない、ごくごく普通の村だった。 集落の真ん中に並ぶ民家と、その外側を取り囲む麦畑。さらにその外側を簡素な木の柵で囲んだ…

第三十四話 剣を背負って

 日が落ち切ってからさらに数時間以上が経過して、ようやく空がまどろみ始めた。小鳥が鳴き出すこの時間帯は、夜明けが近いにも関わらず、日ごろから小春日和を楽しんでいた者たちにとって少し厳しい涼しさを含んでいた。 しかし、室内ではまだ夜と変わらな…

第三十三話 さび

「このハーブティー、すごくおいしいですよ」 差し出されたティーカップを近くに引き寄せた。 カップの内側から湯気が立ちのぼる。持ち上げると、甘い香りが鼻孔を刺激した。 あの後――デューイが旅をやめると言ったあと、スロウはセナの部屋を探した。と…

第三十二話 黒騎士の祈り

 いつからか、家族間での会話が無くなっていった。 父親はレオス教の大司教。 兄は聖騎士団の次期団長。 その二人のもとで育った自分。 二人とも忙しそうだった。 それでも、誇りに思えるほど立派な父ならば、きっと自分たちのことも大切にしてくれるだ…

第三十一話 仲直り

 デューイは大聖堂の集会場所にいた。 スロウ達が白銀都市に来て最初に訪れた場所である。あの時は群衆がずらりと並んでいたが、今は閑散としていて、デューイのほかには数人しかいなかった。ただでさえだだっ広い空間がなおさら広く感じた。「……よっ」 …

第三十話 気分転換

「うわ、ねっむ……」 体が異様にだるかった。 でかい窓から差し込む光で目を覚ましたが、気分は晴れない。昨晩デューイと盛大に喧嘩したことが気になっていて、気が付いたら空が明るくなっていた。 しかもただでさえこんな豪華な部屋でくつろぐことに慣れ…