魔法道具で得たものは。

第十七話 対話

 休憩場所に残された二人のうちの一人であるセナは、首をひねりながら相変わらず杖をいじくっていた。 ルーン文字に反応はなし。解読もしてみたが、「つぐなえ」と書いてあることしか分からなかった。 どうすれば力を見せてくれるんでしょう……。 大げさ…

第十六話 クロノワトルの地下遺跡

 岩壁をくり抜いたような道を進んでしばらくが経過。 筒状に続いていた洞穴が唐突に途絶え、前方に光るものが見え始めてきた。「ここが……」 内部は巨大な空洞になっていた。 たいまつをかざしても天井は見えず、足元は崖となって途絶えていた。 そんな…

第十五話 違法な男

「しかしまあ、めずらしいもんだ。魔法道具が好きな半獣人なんて」 夜、ギルドから少し離れた場所にある宿屋で、スロウとデューイはそれぞれのベッドに寝転がっていた。 奴隷商人オドンに取引を持ちかけられた後のことである。 結局セナは、少し一人にさせ…

第十四話 不信感

「今日はありがとうございました!」 日が暮れてきて、高台から下りている道中である。「話を聞いてくれて嬉しかったです!」と、彼女は笑う。「実は、魔法道具のことが好きな半獣人は、わたしの一族しかいないみたいなんです。だからこういう話ができる相手…

第十三話 夢を追う少女

「セナ・フラントールです! 西のセトゥムナ連合から来ました」「俺はスロウ、よろしく」「先ほどはお恥ずかしいところをお見せしました……」 セナという名の半獣人の少女は、長い耳をしおれさせている。 現在、二人は商店街に戻って並んで歩いていた。 …

第十二話 茶色のウサギを追いかけて

「冒険者にさせてください!」 縦長のウサ耳を頭部に生やした少女が、スロウの隣の受付に詰め寄った。 既にこの時点でギルド内の注目を集めている彼女だが、それでも十分に目立つ格好をしていた。 腰まで伸ばした明るい栗色のロングヘア―に、琥珀色のきれ…

第十話 やがて空は晴れる

「よう、怠けてないでお前も手伝ったらどうだ、スロウ」「足の傷が見えないのか、デューイ?」 座れる場所で村の様子を眺めていると、力仕事に従事していたデューイが戻ってきた。 顔に泥の汚れがついている。 スロウは座ったままで、包帯に巻かれた足を見…

第九話 囮

 バシャバシャと水を立てて村の外側まで移動したスロウ。 教会から対角線上の、最も遠い場所だ。 このあたりでいいだろう。 深呼吸。 銀色に光る剣を掲げる手が震える。 デューイはおろか、加勢してくれる人もいない。 完全に一人だ。 落ち着け、落ち…

第八話 戦闘開始

「ハリウさん!」「スロウくん! デューイさんも!」 スロウたちがミスフェルに着いたときには、既に村の人たちも異変に気付いていたようだ。みんながみんな、慌ただしく動き回っていた。 雨は降り始めている。「水の太陽が向かってきているのが見えました…

第七話 直前

「もう行かれてしまいますか」 朝露が草木を湿らせる早朝。空はどんよりと曇っていた。 まったくの無風状態で、静かな朝だった。 どうせなら昨日みたいに気持ちいいくらい晴れていてほしいものだが、そんなことをぼやいても仕方あるまい。「悪いな、世話に…

第六話 十六から十二時間前

「どうしました!?」 緊迫した様子を見て、スロウは危機を察知する。「西南に魔物がいる。こっちにまっすぐ向かってくるぞ。 ここからでも見えるくらいでかいやつだ」「魔物が……!?」 スクルナを出て以来、自分はまだ魔物と遭遇したことがない。今回が…