魔法道具で得たものは。

第百二十一話 暗闇の底から

 鋭い電撃にあえぎながら、歯を食いしばって目を開ける。 あまりの痛みで見えづらいが、暗い地面に倒れ伏した奴隷たちが天樹会の連中によって刃を突き立てられていくところをかろうじて視界に収めた。 まるで作業のように淡々と奴隷たちの命が奪われていく…

第百二十話 説得

「オラっ、吐け! 出口はどこだよ!?」「い、いや、私めにはそんなことを口にする権限は……」「じゃあ知ってるってこったな?」 人体のどこかを殴る鈍い音が続けて、後ろのほうから響いてきた。 デューイによる天樹会メンバーへの尋問はうまくいっている…

第百十九話 重荷

「えっと、ごめんなさい……」「……謝ることじゃないよ。 頭を強く打たれたんだ。セナはなにも悪くない」 少し時間をおいて冷静さを取り戻し…… いや、ほんとうはまだ気持ちの整理がついてないが…… とにかく冷静にならないとどうにもならない。 問題…

第百十八話 とある地下の洞窟で

「さて、そんじゃスロウ、まずは何から……」「冒険者さま……! 勝手にうちの奴隷に手を出すのは……!」 そこで、デューイの背後から割り込むように視界に入ってきたのは天樹会の男だ。 デューイと一緒にこのリラツヘミナ結晶洞窟に入ってきたのだろうか…

第百十七話 前とは違う姿で

 かなり状況が詰んできた。 意識を失ったセナを置いて一人でダンジョンに向かうわけにはいかず、 結果的として魔法道具を集めれないので、地上に戻るのがかなり厳しくなった。 今までは深層に潜ってもどうにか魔法道具を回収できてはいたが、 あの即死攻…

第百十六話 奪い合い

 新しく回収できた魔法道具を手に脱出用の出口を探し回る。 ダンジョン攻略から戻ってきた直後なのでしんどかったが、 幸いなことに怪我の調子が良くなってきていたので余裕ができていた。 ほんの少しだけ軽く感じる足を動かしてセナと一緒にしばらく歩き…

第百十五話 青い結晶

 広場をはなれ、電撃を食らった身体を休めながら背中を合わせてすぐ後ろに座っているセナに向かって口を開いた。「……ここに来てからもう一日経ってる。 もしかしたら天樹会スノスカリフたちは舟のところにたどり着いてるかも。 早くここを抜け出さないと…

第百十四話 ステルス・ゲーム

 ほんの少しだけ痛みが和らいできた腹部をおさえながら狭い洞穴を潜り、潜り……大部屋のような広い空間を通ってから、また狭い洞穴の奥へ潜る……。 それが何度も繰り返されていく途中で、自分たちに声をかけてくれたグループの一人がふと大部屋のすみを指…

第百十三話 リラツヘミナ結晶洞窟

 リラツヘミナ結晶洞窟。 かつて冒険者としてダンジョンに潜る日々を送っていたころ、その噂だけは耳にしたことがある。 廃都ベレウェルと並ぶ、A級・・ダンジョンの一角で、その規模の大きさもあいまって攻略の難易度はトップクラスとされており。 そし…

第百十二話 すべての元凶

「……セナ、怪我は……」「おい、静かにしろ!」 声を出した途端、何者かに頬を殴られた。 痛む首を動かして確認すると、人相の悪い男がこちらをにらんでいる。 始めて見る男だ。 自分たちを陥れたイズミルでも、あの上位ランカーの決闘者でもない。 た…

第百十一話 セトゥムナの上位ランカー

「……だましたんですか!?」「フラントール族が隠し持つ空の『箱舟』さえあれば異世界渡りが可能になる。 実際に魔法の世界に行けるのなら、狭い部屋にこもってちまちま研究する必要なんかないじゃないか」 それに。 とイズミルが自身の背後の決闘者たち…

第百十話 弱肉強食

 多くの扉でひしめいていた大樹の内側を後ろ髪を引かれるような思いで後にし、イズミルとともに外へ出る。 室内から屋外へ出た瞬間にだけ味わえる爽やかな茎をたっぷりと堪能しながら出入口の門番に挨拶とお礼を伝え、一行いっこうはフラントールの里へと戻…