第九十八話 序列第十位
爽やかな風が吹き抜ける、早朝の大森林。 樹上に組まれた猫人族の里から降りた俺たちは、その大地の上に立って相手が来るのをじっと待っていた。 土気色の広場の真ん中で堂々と仁王立ち……というわけでもなく、俺と族長が並んで打ち合わせをしているよう…
魔法道具で得たものは。
第九十七話 今後の方針
「ちょっと」 茫然としていると、裾を引っ張られる感触がした。「兎人族って言ってたけど、あんたが探そうとしてるのってあの兎の子なのよね? しっかりして。 まだ取り返せないって決まったわけじゃないでしょ」 小声で耳打ちしてくるエフィール。 そこ…
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第九十六話 歓迎
……なぜか、周囲に侍るのは猫耳の美少女たち。 目の前に広がる、肉類を中心とした豪勢な食事に目を丸めつつ、やたらと肌を密着させてくる猫耳の娘たちにキョドりまくる。「ささ、あなた方は私たちの恩人ですから。 どうぞ、くつろいでくださいませ」「……
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第七章 セトゥムナ連合編
第九十五話 久々の対人戦
「頼む! いま奴隷に落ちたら、私の家族が……!」「知るかよ! お前たちは『決闘』に負けたのさ! 敗者は勝者の下につく……それがルールだろうが!!」 追われていた方の半獣人たちが乱暴に取り押さえられ、手錠らしき拘束具をつけられていく。 彼らは…
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第九十四話 やくそく
気が付いた瞬間には、見覚えのある墓地に立っていた。 真っ白な花畑が地平線上にずーっと広がる、涼しい空間。 墓標の上を霧が揺蕩う、幻想的な景色。 足元に触れる、柔らかい花の感触。 今回は、割と意識がはっきりしていた。 確信めいたものを感じな…
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第九十三話 砂嵐の塔
――ようやく、たどり着いた。 ついに水も食料も尽きようかという時に、自分たちはそれを見つけた。 舟を停めて、小さな砂丘を登り、そのてっぺんから確認する。 竜巻のようにそびえ立つ、砂嵐。 その薄茶色の雲の粉塵が螺旋らせん状に巻き上がり、そし…
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第九十二話 取引
「――――」「……いいえ。気持ちはうれしいけど、戻るわ」 少し離れたところで、エフィールがベールを被った少女と手をつないでいた。 あの踊り子のような風体の子はたしか、マーヤと言ったか。 少しうつむいているところを見るに、もしかしたら泣いてい…
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第九十一話 芽吹き
「――とりあえず、買うものは決まったわよね」 砂塵が舞う市場の往来を進みながら、彼女が言った。 影が無くなるような強い日差しの下、エフィールは何かの動物の素材を使った革袋を下げながら、これから買い揃える物品を諳そらんじている。 必要なのはす…
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第九十話 選びなおし
砂丘をいくつも超えた先に、あのサソリ型の魔物がいた。 やつは蜃気楼に揺らめきながら長い尾を立たせ、複数ある脚の何本かを欠けながらも悠然と歩行している。 ――目的の魔物の姿を確認した異種族たちの一行は、慎重に足を進ませていく。 その中には、…
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第八十九話 啓示
スロウはマーヤとの話を終えて……エフィールがいるはずの宿へと足を向ける。 途中で露店を見つけたので、あいつも腹を空かせているだろうと思い、 団子状に丸められた焼き料理を二人分購入。 これは味は薄いがなかなかに腹持ちがいい。 大きな葉で包装…
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第八十八話 境界線
時は少しさかのぼり―― スロウがマーヤを探しに宿を出た直後、 エフィールは、閉じていたまぶたを開けた。 マーヤと再会する直前、前払いで契約していたこの一人部屋はかつてのハンモックが並ぶ安宿よりも少しだけ整っている。窓には何とも言えない装飾…
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第八十七話 応えられるのは
――翌日、スロウはオアシスの近辺を歩いていた。 昨日のあの夕焼け時のような静けさは今はもうどこにも面影が無い。 爛々と照り付ける太陽が昇っている日中、このオアシスの街はすでに普段通りの活気を取り戻していた。何が起ころうと世界は回り続けると…
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